日本地図の上に「EARTHQUAKE」とかいたサイコロ

地震に備える住まいを考える【耐震等級】とは?

天災の多い日本に暮らす上で、住まいの「頑丈さ」「安全性」はとても重要です。中でも地震は前もって予測することが難しく、ひとたび起きれば被害は甚大なものとなります。

特に1995年の阪神・淡路大震災では、旧耐震基準(1981年6月以前)で造られた家屋が多く倒壊し、たくさんの方が亡くなりました。死因の約9割が建物の損壊に伴うものであったことは、多くの人に衝撃を与えました。

ここでは住まいの用語としてよく耳にするようになった耐震等級について考えます。

耐震等級ってなんだろう

家のミニチュアとチェックリスト

住まいの用語としてよく耳にする「耐震等級」。地震に備えるために知っておきたい用語のひとつです。

耐震等級のなりたち

耐震等級という考え方ができたのは2000年。4月1日付けで施工された住宅の品質確保の促進等に関する法律略称品確法)に基づくものです。

住宅の性能を分かりやすく表示する目的で作られた「住宅性能表示制度」の一環として、1から3で区分される「耐震等級」という指標が生まれました。性能を示す共通ルールができたことで、専門知識を持たない一般消費者にも、住宅の比較検討がしやすくなりました

ただし、この制度は義務ではなく任意のため、2000年以降であっても耐震等級の評価を得ていない建物もあります。

耐震等級は構造計算がベース

耐震等級を評価するために必要なのが構造計算です。建物の構造を数値化し、地震や気候の変化にどれだけ耐える力があるかを算出し、等級のレベルを評価します。構造計算には2つの方法があります。

   構造計算
 壁量計算 計算方法 許容応力度計算
 地震力、風圧力に対する必要壁量を計算する 内容 柱や壁がどのくらいの強さがあるのか、

どのくらいの荷重に耐えられるのかを計算する

 A3用紙1枚程度  資料  A4用紙数百枚
許容応力度計算の必要がない建物で、

簡易的な方法として採用される

 その他 木造2階建てまでで面積が500m²以下のものは義務はない

高額な費用がかかる

壁量計算は計算上で住宅の性能を測るもの。検証を伴わない簡易的な方法で、耐力壁の量が十分かどうかを確認します。地震や積雪、強風といった水平力(床面に平行に作用する力)が建物にかかったとき、どの程度耐えることができるのかを計算し、数値として表します。

耐震等級2や3を目指す場合

  • 壁量計算+「床・屋根倍率の確認」「床倍率に応じた横架材接合部の倍率の確認」

床・屋根倍率の確認

 壁量に相当する数値を床や屋根が備えているか確認する

床倍率に応じた横架材接合部の倍率の確認

 建物自体の重さや積雪などに対して、横架材(梁や桁)の強さが足りているか確認する

許容応力度計算は、水平力の計算と検証だけでなく、さらに鉛直力(上から下にかかる力)も検証します。全ての柱や梁の検証を行う手間がかかるため、資料のボリュームも費用もかなり上がります。信頼性の高い結果が得られるため、安全をより重視する方はこちらを選んでいます。

耐震等級

耐震等級の具体的な内容を見ていきましょう。1から3の等級があり、数が大きくなるほど耐震性能が高い住宅であると言えます。

耐震等級1 耐震等級2 耐震等級3
耐震性能 新耐震基準 新耐震基準×1.25 新耐震基準×1.5

人命 助かる 助かる 助かる
建て

直し

可能性あり 不要 不要
修繕 大規模 中程度 少々

※大規模地震は震度6強~7

耐震等級1(=新耐震基準)

新耐震基準

中規模の地震(震度5強程度)に対しては、ほとんど損傷を生じず、極めて稀にしか発生しない大規模の地震(震度6強から震度7程度)に対しては、人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないこと

参考:内閣府 防災白書

1981年6月に施行された建築基準法「新耐震基準」の水準が、品確法でいう「耐震等級1」にあたります。現在国内で建物を建てる場合、これをクリアしていなければなりません。そのため、建築許可が下りている場合は耐震等級1が担保されているといえます。

耐震等級1という値は「命の危険はない」、でも「その後の生活は保証できない」レベルです。大きな地震が起きた場合、倒壊や崩れなど、建物にかなりの被害が出、大規模な修理や建て替えも余儀なくされる状態になる可能性があります。

耐震等級2

耐震等級1の1.25倍の耐震性能

病院や学校といった公共施設、避難拠点に求められる耐震性が「耐震等級2」。長期優良住宅を申請する場合に求められる性能でもあります。

「命の危険はない」上に、「ある程度の補修でその後も住むことができる」強度を持っています。

耐震等級3

耐震等級1の1.5倍の耐震性能

防災拠点(警察・消防など)になるような建物に求められる耐震性が「耐震等級3」。これを取得していると、震災に対してリスクの低い住宅であると判断され、地震保険料が安くなるメリットがあります。

耐震等級3は「命の危険はない」上に、「少しの補修でその後も住むことができる」強度と定義されています。最近の新築物件は耐震等級3を謳うものが多くなっています。

品確法以前の建物の耐震等級

2000年以前の物件に関しては、耐震等級の分からないものがほとんどです。耐震等級は建設時に構造計算をして算出しているため、品確法が施行される以前の物件では行われていません。

ただし、1981年6月1日以降の建物は、建築基準法の新耐震基準要件を満たしているため、耐震等級1に相当する耐震性があるといえます。

マンションと戸建て、耐震等級を考える上で違うこと

虫眼鏡を当てた建物の模型

マンションと戸建てでは建物の構造が大きく違っています。耐震等級はそれぞれどう考えればよいのでしょうか。

マンションの場合

耐震等級1の理由

マンションはあまり耐震等級について語られることはありません。マンションの耐震等級は1であることが多いのです。理由として「居住空間が狭くなる」「コスト高」があげられます。

耐震等級2以上を望む場合、壁を厚くしたり、柱や梁を太くする必要が出てきます。これらの構造は居住空間に直結しており、どうしても部屋を狭めることになってしまいます。

そもそもマンションは一棟を建設するのに費用がかなりかかるものです。耐震等級をあげるための設備コストを追加すると、建設費用は更に高額に。そして建築費用は一部屋ごとの販売価格に反映されます。販売価格が高くなりすぎると、どんなに性能のよさを謳っても買い手がつかない場合も……。やみくもに耐震等級をあげることばかりを求めることはできません。

耐震だけでない地震対策

現在のマンションは許容応力度計算を用いた構造計算を必ず行っています。「制震」や「免震」といった構造で地震への対策を講じている物件もあります。耐震等級の数値だけを気にする必要はありません

マンションの構造
耐震 壁や柱といった構造物の強度を高めることにより建物全体の強度もあげ、地震の揺れに対抗する。
制震(制振) 建物にかかる地震力を、建物内に設置したダンパーによって低減。揺れを小さくする。
免震 地面の上に免震装置があり、その上に建物を載せる。地震力は免震装置がその大半を吸収するため、建物の揺れは小さくなる。

戸建ての場合

耐震等級3 ニーズの高まり

2016年4月に発生した熊本地震では、建物に大きな被害が出ました。震度6から7クラスの地震が数日内に複数回起きるという特異な例だったとはいえ、耐震等級1だけでなく、耐震等級2の水準で10年以内に建てられた住宅ですら、建て直しが必要なほどの被害を受けました。

熊本地震を受け、各住宅メーカーは「いまから建てるならば耐震等級3を」とより高い耐震性能を競うようになりました。

戸建ては主に木造・鉄筋コンクリート造・軽量鉄骨造に分けられますが、使用建材によって耐震等級が変わることはありません。「耐震等級3」水準で造れば、いずれの建材で造られても、等しく3の強度・性能を持ちます。

ただし、同じ耐震等級3であっても、建材それぞれの特質から違いは出てきます。工期や費用はもちろん、等級に必要な壁量も変わってくるため、自分たちの予算も加味した慎重な検討が必要です。

4号特例の波紋

この災害では「4号特例」(建築基準法第6条第1項第4号)もクローズアップされました。「4号建築物」に関し、建築士が設計していれば、確認申請時に構造計算書の添付は不要であり、行政は建築確認の審査を簡略化できるという規定です。

4号建築物の条件

  • 木造
  • 2階建て以下
  • 延べ面積が500m²以下
  • 高さ13m以下
  • 軒高9m以下

  →大半の木造戸建て住宅が該当

4号建築物と認定されるための条件は広く、木造戸建て住宅の大半をカバーします。多くの住宅が構造計算の義務を免除され、行政のチェックを受けずに施工されている可能性があります

こうした4号建築物の中に、十分な耐震性を持たない建物があるのでは、熊本地震であれだけ多くの被害が出たのはこの特例が原因では……とも言われています。

特例の弊害はかなり以前から指摘されており、2009年12月には「4号特例」の廃止を目指し、国土交通省が動いたことがありました。しかし建築業界からの強固な反対にあい、あえなく見送りとなりました。

住宅を建てようと考えるときは、4号特例に甘えることなく、本当に安心・安全な建物を建ててくれる建築会社や工務店を見極める必要があります。

耐震等級、リフォームするときどう考える?

家のミニチュアを前に考え込む二人の大人

長く住んだ自宅の耐震性が気になる。購入を考えている中古住宅は今後の地震にも耐えられるだろうか。そんな不安は耐震リフォームが解決してくれるかもしれません。

リフォームで耐震等級を上げたいとき

今後起こりうる大きな地震に備えたい。そう考えたとき既存の戸建て物件でできることはあるでしょうか。

部分的なリフォーム

うちは築年数も浅いし、大きな問題は見つからないわ

現状大きな問題がない建物にさらに強度を求める場合、まずは部分的なリフォームが考えられます。よく建物を点検してみましょう。

壁や土台に入ったひび割れは強度劣化に直結します。美観を損ねる程度の浅いひび割れは、市販の補修材を使ってDIY修理もできますが、大きなものや深いもの、複数個所まで範囲が広がってしまっているものは、リフォーム業者に対応してもらいましょう。

壁の強度が不安な場合は、一度外壁をはがして中に耐震パネルを取り付けたり、耐震金物を接合部分に設置してより強固にしたりといったリフォームが提案されます。

重い瓦屋根を軽量化することで、揺れの影響を小さくすることも可能です。屋根の素材を確認してみましょう。

大掛かりなリフォーム

長いこと放置していたら、建物の傷みが目立つようになってしまったなぁ……

1981年6月以前の建物や傷みがひどく進んだ建物は、部分的な修理では対応しきれません。建物を構成する構造体のバランスがうまく取れてこそ高い耐震性能が叶うため、大規模なリフォームが必要です。

フルリフォームスケルトンリフォームと呼ばれる工事は、既存建物の骨組みを残して造り直す大掛かりなものです。

部分リフォームに比べ、工期も費用もかかりますが、解体を行うことで、以前の建物のときに起きた、腐敗やシロアリといった躯体トラブルも具体的に確認できます。

前回のトラブルを踏まえ、基礎や外壁も最初から造り直すことで、目指す耐震等級を叶えることが可能です。

リフォームするときの注意点

工事を行う場合は、リフォーム内容だけでなく、こんな部分にも注意しましょう。

必要なリフォームを見極める

耐震等級を上げることばかりが気になって、あそこもここもとリフォーム箇所を増やしていくと、新築同様かそれ以上の金額になってしまう恐れがあります。また建物全体のバランスが崩れ、思うように強度が上がらず、かえって不安定になってしまう場合も。リフォームは本当に必要な箇所に絞って施工することが重要です。

リフォーム期間中の暮らし

部分的なリフォームの場合は住みながら行うものもありますが、大掛かりなリフォームとなれば、一度家を空ける必要があります。実際のリフォーム費用だけでなく、工事中に自分たちが住む場所を確保することが必要となるため、費用がかさむことになります。思うような場所や予算の借家がなかなか見つからない恐れもあります。

意外とかかる工期

大掛かりなリフォームはもちろん、部分的なリフォームであっても、作業によっては溶剤が固まる時間を確保しなくてはならず、まとまった工期が必要となる場合も。すべての作業がどんどん進められるものばかりではありません。事前に日程をよく確認しましょう。

まとめ

耐震等級に関連する情報をお伝えしました。耐震等級という用語は家を新築するときに耳にすることが多いですが、既存の建物でも重要になる考え方だということがわかります。

耐震等級のポイント

  • 2000年4月1日に耐震等級という指標が生まれた。
  • 等級は1・2・3の3段階。数が大きいほど耐震性が高い。
  • マンションは耐震等級1のものがほとんど。
  • 戸建てでは耐震等級3のニーズが高まっている。
  • リフォームで既存住宅の耐震性能を高めることができる。

耐震等級を指標として、より安全に安心して過ごせる住まいを目指しましょう。

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